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2024/09/23

 ちょっと濃いめの女性向け描写があるので畳んでおきます。
 時期的には四層くらい。

 これから続く一連のエピソードは、この二人の話を書く上で一番書きたい部分の一つだったりするのですが、問題は私がそれを書ききれるかどうか……
 収拾つかなくなったら、この話はif扱いになるかも知れません。(無責任)
 ifにならんように一区切りついてからまとめて出せよ!というのは仰るとおりなんですが、それをやってるとおそらく早々にこのサイト更新止まるので……なにとぞご勘弁くださいまし……

 「Collapse」(←こっちの時期は五層も終わり付近)と矛盾するように見えますが、多分最後にはちゃんと一本に繋がるは、ず……
 落として上げて、の落としの部分に該当する話です。今の所まだ「上げて」の部分が完成しておりませんので、嫌な予感がする方は回避した方が良いと思われます。

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 背中には頑丈な壁の感触。咄嗟に押しのけようと上げた右手は易々と絡めとられ、肘下までまくられていたシャツの腕に柔らかな感触が寄せられる。その行為の中に透けて見える意図を感じ取って、ランビリスは思わず上擦った声を上げた。
「おま……何、やって」
「――わからないか?」
 途切れがちな台詞を笑うように、捕らえられた腕の内側に断続的に吐息がかかる。そのままきつくそこを吸われて、鋭い痛みと、ぞくりと危険を知らせる悪寒が背筋を駆け抜けた。
 危機感が足りなかった――そう悔やむには遅すぎるだろう。
 ミュルメクスが何をしたいのか――これから自分が何をされようとしているか、それが解らないほど初心ではない。ただ理解したくなかった。断じて認められない。
 思わず身を強張らせたランビリスの耳元にミュルメクスは顔を寄せ、決定的な台詞を囁く。
「――お前を抱きたい」
「――っ」
 台詞に込められた意味、湿るような劣情を滲ませた声に思わず反射的に顔を背け、まだ自由だった左腕で押しのけようと青年の肩を掴んだが、とんと軽く内側から肘を押されてあっさりと外される。そのまま壁に縫い止められて、抵抗の手段を失った。
 しかし両手が塞がったのはミュルメクスも同じだ。だが、これ以上事を進められる前に逃げだそうと身を捩ったランビリスの襟元へ、ミュルメクスは顔を寄せる。背けられた顔の所為で剥き出しになった襟元へと噛みつくと、壁際に押さえ込まれた体がびくりと跳ねた。暴れ出そうとする両腕に力を掛けながら、彼は口で器用に襟元のボタンを外していく。ボタンが一つ外されるごとに首筋にささやかな吐息がかかり、そのたびに背筋をぞくりと得体の知れない悪寒が駆け抜けてゆく。状況の異常さに混乱しそうになる。
「止めてくれ……!」
「出来ない相談だ」
 懇願はとりつく島もなく拒絶されて、半ばまでシャツを肌蹴させられる。曝かれた胸に柔く熱い感触が落とされた。息を呑んだ動きは当然知られてしまっているだろう。嫌だ、と暴れるが、姿勢の利はミュルメクスの方に分があるようで、一瞬壁から浮いた背は、だがすぐに強い力で封じ込まれてしまう。押しつける、というよりは半ば叩きつけられるように抑え込まれて、衝撃で壁際に置いてあった薄い棚が揺れた。不安定に並べてあった本や作りかけの"ガラクタ"が落ちて雑多な不協和音を奏でた。
 衝撃に僅かに息を詰め、伏せた視界の端に、足下まで転がってきた樹脂と金属の塊が映る。
 それを気に止めることもなく、従順にならないランビリスを責めるように、ミュルメクスは晒された胸をきつく吸い上げた。
 走った鋭い痛みに思わず小さく呻いたのが聞こえたのだろう、ふとミュルメクスが顔を上げた。濃い青の瞳と視線を合わせられなくて、ランビリスは目を伏せる。落とした視界の中では、衝撃でスイッチが入ったのだろう、乱雑に散った本の隣で、ガラクタの起動中を示す赤いランプが小さく光っている。
 その視界を塞ぐように、口づけを施そうとミュルメクスが顔を寄せてくる。ほとんど触れあいそうな距離になったとき、ランビリスは口を開いた。
「ミュルメクス、嫌だ――止めてくれ」
「出来ないと言った」
 吐息の絡む距離での、囁くようなやり取り。一瞬の沈黙。やがてそれに耐えかねたミュルメクスが唇を寄せ、二人のそれが触れあいそうになった瞬間――悪い、とランビリスが呟いた。
 その謝罪が何を意味するのか、ミュルメクスが考えを巡らせるよりも早く、ランビリスが足下のガラクタを思い切り踏みつける。

 瞬間、パン、と脳裏に火花が炸裂した。

「!……っ」
 体中に走る衝撃と共に、後方へと弾き飛ばされる。
 意思に反して腕が、足が痙攣し、いうことをきかない――その感覚には覚えがあった。四階層に到達して以来嫌と言うほど味あわされた、雷魚の電撃と同じだ。それが何故――?
 思考や意思とは裏腹に、一時的に制御を失った体は勝手にその場に頽れる。
 ランビリスも同じように壁に縋って座り込んではいたが、未だ彼の方が被害は小さかったようで、傷みに顔をしかめたままゆっくりと立ち上がる。
 足下の“ガラクタ”を拾い上げて、彼は深く息を吐いた。
「……すまん。これはアンドロのパーツの試作品でな、攻撃されたときに雷撃を発生させる装置なんだ」
 それが「試作品」となった原因は、反撃範囲の狭さと、攻撃方向が限定できなかったことにある。つまり、作動させることで二人ともどころか、ランビリスだけが雷撃を受ける可能性もあったのだが、一か八かの可能性に頼る程度には――どうしても、受け容れられなかったのだ。
「またお前がさっきみたいなことをすれば……俺はもう一度これを使う」
 ミュルメクスはおそらくこちらを見ている。言葉がないのは未だ麻痺が解けていない所為か。いずれにしろその視線を受けることが出来なくて、ランビリスは手の中のそれに目を落とす。
「悪いが今日は帰ってくれ。それから――もう、来ないでくれ」
 それは明確な拒絶の言葉だった。
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2010/06/04
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