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2024/09/23

 手の中には、ひんやりとした冷たい感触。左手の中の果実が回る度に、右手の刃物はしゃりしゃりとリンゴの皮を削いでゆく。滑らかに、とは言えないがそれでも充分すぎるほど順調にシンクの中に垂れていく皮を、物珍しげに注視する視線があることにも、もうだいぶ慣れた。
 紅い果実の半ばほどまでを剥いたところで、重みに耐えきれなかったのか、ぷつりと皮が切れて落ちる。作業の節目を待っていたのだろうか、そこでようやく視線の主が声を上げた。
「そういうことは、どこで習った?」
「どこで、ってわけじゃないさ」
 まるで特別な技能について問うような調子に僅かに苦笑して、ランビリスはリンゴを剥く手を止める。シンクに細く長く落ちた皮は、見慣れなければ曲芸のようにでも映るのだろうか、と思いながら、言葉を続けた。
「大抵は母親がやってるのを見て習って、家で覚える。……料理は女の仕事にされることが多いけど、うちは食い物作って売る仕事だったし、兄弟全員男だったしで、こういうのは手伝いついでに習ったな」
 子供の頃は、母親の滑らかにリンゴを剥く手つきがまるで魔法のようで、剥かれたリンゴよりはそちらの方がよほど子供心に魅力的だった。
「綺麗に剥けるのが羨ましくてな。一時期、2週間くらいか。皮むきの練習でリンゴばっかり喰ってた。……なんだ?」
「お前は凝るのが好きだと思って」
「凝ったわけじゃ……上手くいかないのが悔しかったんだよ。やってみるか?案外難しいんだぞ」
「ああ。教えてくれ」
「……え?」



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 バッドエンドルートから復帰した辺りかなぁ……

 ところで、皆様はリンゴの皮、つなげて剥けますか? 私は剥けません。むしろ包丁でリンゴの皮が剥けません。どうせピーラー使いだよ……
 バリは皮むきは特に上手いわけではないけど、ちゃんとむけます。


「……左手は軽く。滑らない程度に握ればいい。右手は柄の辺りでしっかり持って指を背に沿える……で、いいか?力の入れ方はこう…調節は左手でも人差し指でもなく、右手の親指でやる。親指でリンゴを引き寄せる、というか回すんだ。刃の当て方は少し斜めにして、狭い範囲に力がかかるようにする。そうすると良く切れるようになるのは力学的に考えれば解るよな?他の所に余計な力は入れなくていい、滑ったときに怖いからな」
「……指導が細かすぎやしないか」
「だってお前……今までに包丁握ったこと、何回ある?」
「…………」
「いい、数えなくていい。つまり数える気になるほどしかないんだろ? お前が刃物の扱いも知らない子供じゃないのは解ってるが、それでも剣と包丁じゃ扱い方も持ち方も全然違う」
「……。 こうで良いのか?」
「……そう。で、親指でリンゴを回す。……そんな感じだ」


「……なあ、何でいきなりこんな事…どういう風の吹き回しだ?」
「やってみるかと訊いたのはお前だろう?」
「そりゃ、そうだが……いつもなら見てるだけでいい、って言うだろ?」
「……これから、出来たら便利だろうと思っただけだ」
「これから?」
「……国に」

「帰らないなら、必要だろう?こういう事が」
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2010/11/24
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