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2024/09/23
 神羅

 かくれんぼが好きだった。


 野を渡る風、芒の原。
 枯れ草の間に身をかがめて、もう良いよ、とそう叫ぶ。

 こうして隠れてしまえばもう見つからない。枯芒は、子供がかき分けて進むには高すぎた。
 姉が自分を探してくれるのが嬉しかった。
 ほんの少しの優越と、それから明確な理由のない恐ろしさ。
 それを押し込めてじっとしていると、じきに姉は自分の名を呼び出すのだ。出ておいで。もう降参だ、と。


 せつな。

 せつな、
 せつな、木枯らしと同じ色をした声は幼子が呼ばわるようで。

 泣き出しそうな声に立ち上がった。


 おねえちゃん。
 ごめん。
 ごめんなさい。

 ごめんなさい。

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2006/12/25
 神羅

 なにか奇妙な違和感を感じて振り返ったそこには、剣を抜いて立つ王の姿。
 息を飲んだ。
 血の色でも銅の色でもない、奇妙なほど赫い刃と、燃え立つような波打つ刀身――「炎帝の剣」。それは代々飛天王のみに受け継がれるそれは王位の証でもあり、故に王はその地位と正当性の証明のために、公式の場では必ず佩刀することになっている。
 しかし――否、だからこそ炎帝の剣は軽々しく抜いてはならない。それを持つ者は飛天王とその継承者だけ。それをぬき、特徴的な刀身を曝すということは己が王であると宣言するに等しい。戦場で抜けば狙われる。
 いくら王の血筋には強大な魔力が宿っていると言っても、所詮人の身に授かることが出来る力は限られている。攻撃が集中すれば全てを防ぎきれるとは限らない。だから、炎帝の剣は戦場では使わない――使ってはならない。今のような、敵味方入り乱れての乱戦で抜くのは自殺行為にさえなる。
 ―――何を考えている。
 劣勢に業を煮やしたか。あるいは敵勢に恐れでもなしたか。
 いずれにしろ危険すぎる。
 ――止めなければ。
 声を荒げようとした瞬間、剣戟の音でも聞いたのか、はたまた全くの偶然だったのか、真紅の翼を負った者は振り返る。
 黄金色の髪が揺れて、翠の瞳がこちらを捉えた。こちらが何かを言うよりも早く、否、言葉を紡ぐのを制すように、
 確かに、ふと、その人は笑った。

 その奇妙に余裕を含んだ表情に、言葉を奪われる。

 戸惑った一瞬の間に視線は逸れて、王はあっさりと前へと向き直る。
 ―――何をする気なのか。
 問うまでも、待つまでもなかった。

 掲げられた赤い刀身は、目の前で、文字通り燃え上がった。
 次いで突風。
 孤剣を掲げて立つ王を中心として渦巻いた風は、服の裾と土煙を巻き上げて駆けてゆく。魔力の解放によって起こる風だったが、今回は異常なほど強い。
 その間にも剣に宿った炎は光を増してゆく。――否、輝いているのは炎ではない。剣自身が、さながら溶岩のように発光しているのだ。
 剣を媒体とした魔力の発現。
 今更ながら感じ始めた、場に満ちる強い「力」。
 王が高く剣を掲げる。さながら天を突き刺すように。

 そして、声。

「コロナ・ストーム!」

 炎を司る王の声に応えて、100万度の光と大気が、衝撃波となって荒れ狂うっ!

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 call
 神羅

 貴方は気付いているのだろうか。

 役職か、続柄か、あるいは二人称でしか、貴方を呼ばない僕に。

 決して貴方の名前を呼ばない僕に。



 どういう調子音量音程感情で、貴方を呼べばいいのか、解らない。

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2006/05/02
 遠雷
 神羅

覚えなさい。
 (剣の技、魔法の性質、それを扱う心構えを)

鍛練なさい。
 (肉体を、精神を。長い戦いにも耐えられるよう)

叶う限りを尽くしなさい。
出来うる全てを伝えるのだから、一つ残さず取り込んで、己の血肉と成しなさい。

覚えなさい、全てを。
精進しなさい、その日まで。

何時私の元を、離れる時が来てもいいように。

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 神羅

 何かを忘れている気がする。
 忘れてはならない何か。
 己には酷く不似合いな、けれど切り離せない、何か。





 上空から、小柄な一人とそれを囲むようにした数人へと魔法を放つ。暗い色をした炎に焦がされる前にその場を飛び退いた、緋の二対の翼を持つ相手の眼前へと降り立てば、少女のように優しげな面差しの少年は眼を瞠り、次いでその面に緊張と敵意を漲らせた。
 彼の親衛隊か何かなのだろう、先ほどの魔法で散らされた騎士達が駆け寄ろうとするが、年若い王はそれを制す。反駁の声にも彼は答えず、その若草色の瞳に強い光を浮かべ、射るような眼差しでこちらを見る。
 知らずその名が口をついて出た。
「…飛天王、アレックス……」
 

タオスベキテキノナ



道を阻む五つの―――――――――――――――
―――――――――厄介な相手

―――目的の障害

敵――――――

―――――――――――その首級を挙げよと

憎き愚か者ども―――――――




―――けれど懐かしい。



「……?」
 唐突に浮かんだ思考に、心中で首をかしげる。



             ――懐かしく、

懐かしい?


             ――愛おしく

一体これは?

             ――大事な、



―――大事な何だというのだ!


唐突に脳裏に浮かぶ言葉を振り払う。
 年若い飛天の王は先ほどの言葉を問いと受けたのか、こちらから視線を離さずに頷く。
「確かに僕が飛天王です。……貴方は何者ですか」
 圧し殺すように出された低い声。その声に呼応するように胸中に広がった名も知らぬ感情に戸惑う。
「貴方は誰です、答えなさい!」
 激しい誰何。
 小柄な少年の纏う、その炎のような気迫に眼を細め、口を開く。
「――我が名は鳳王フルスベルグ」
 握った抜き身の剣の、その切っ先を向ける。
「皇魔族四天王が一人として、その首貰い受けに来た」

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2006/03/23
 Balance
 神羅

 苦しい、と言ったら貴方は愛想を尽かすだろうか。

 人の顔色を伺うだけの愚物に成り下がれたらどんなに楽だろう。
 綺麗事だけを並べる聖人君子になれたらどんなに良いだろう。
 あるいは非情なだけの暴君にさえ、なれたならそれは幸せだろう。

 けれどそのどれにもなれない、賢君でひたすらあろうとする自分。

 ただ貴方に見捨てられたくない一心で、この危うい均衡を保っている、僕。

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2006/03/22
 神羅

Let's go!

 突っ走れよ、今すぐ
 欲しい物があるなら

 遠慮なんかせず、その手で掴み取ってやりゃいい
 物だって心だって、actionしなきゃ手に入らない

 立ち止まるなんてnonsense
 息切れはまだ先だろう?

 さあ、地面が見えたら
 突っ走ろう、今すぐ

 道なんて走らなくたっていい
 不正非合法なんだってーの?
 転んだって擦りむいたって、泥だらけになったって
 それくらいの凹凸がなきゃ、走るのだって面白くないぜ!

 物だって心だって、actionしなきゃ手に入らない
 突っ立ってるだけの幸せ、そんなもんnegative!
 
 さあ
 突っ走れよ、今すぐ
 馬鹿みたいに、真っ直ぐ!

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2006/03/07
 神羅

この繋いだ掌の、流れ込む体温のように。
言葉では伝わりきらない言葉気持ち想い全部、伝わったらいいのにと思った。

そんなことを言えば、君は不精の言葉だと微笑うのだろうけれど。
言葉が足りない私には。
誇りが邪魔する私には。

言葉でも行動でもなく。
ただこの体温で伝えるしか術がない。


愛しているという世迷い言のような言葉を言えば、君は笑うだろうか。

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2006/03/05
 神羅

 貴方が死んだんだ。
 いつ死んだっておかしくないところに立っているのは知っていたけれど、貴方が死ぬなんて思いもしなかった。
 高を括っていたわけじゃない。

 一人でふらりと行ってしまって、散々心配させて、そんな余裕もなくなったとき、やっぱりふらりと帰ってきた。
 そんな貴方だから、大丈夫だろうと思ったんだ。
 それに貴方は強かった。私よりずっと。
 なにより貴方は明るい人だったから。
 そんな貴方の、死に顔なんて想像できなかった。

 いつだって先陣を切って敵へと向かっていく、優しくて強い人。
 だから貴方についてきた人だって沢山いたのに。それともそれが徒になったのか。
 未だやることはあったでしょう。貴方への期待。帰りを待つ人たち。貴方が愛した風景だって。
 ゲームのエンディングのようには上手くいかないし、ハッピーエンドと言うには問題も山積みだけれど、それでも少なくとも、すこしの平穏くらいはあったはずなのに。

 ずっと一緒にいた貴方は、たった一人で逝ってしまった。

 貴方の声も笑顔も仕草もちゃんと覚えていて、いつだって思い出せる。でも、思い出すのはやっぱり、今までの貴方で。
 あの日あの時より後の、貴方の記憶は何処にもなくて。
 
 貴方のこれからは何処にもない。
 貴方はもうどこにも居ない。

 どこにもいない。
 どこにも

 どこにも。

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2006/01/14
 神羅

 血色の悪い指が、半透明の板の上に踊る。長い指がそれぞれ別の動きをする様は、さながら蜘蛛のようだ。
 指先が触れると、赤い文字は一瞬光を増して、すぐに元の光度へ戻る。それが何度も続けられて、やがて手の動きが止まった。
「……消耗率18.6%、撃破率15.2%」
 口を尖らせて呟いて、アナンシは持っていた板を腕で挟んで、その肘を曲げた膝の上に器用に載せて頬杖をついた。
「結局今日も負け戦、かぁ」
 憂鬱そうな台詞に反して、表情に憂いはない。幼い顔のパーツは、ただ退屈を表している。その表情に、ほんの少し苛立ちが混じった。
「…誇りだの、何だのってさ。そんなのどうだって良いよ、大事なのは結果でしょ?」
 ねぇ?とアナンシはその細い体躯に似合わぬ右手の指先でつり上げた、自らが飼う子蜘蛛に問う。空中で、黒い蜘蛛はわさわさと八本の足を動かした。
「ベリアールサマは詰めが甘いしさ。マステリオンサマは動かないし」
 ふい、と指を振れば蜘蛛は放物線を描いて近くの枝へと引っかかった。
「……みんな怠けてるよ」
「――そう言うでない」
 唐突に聞こえた声アナンシは振り返る。声の主の予想は付いている。
「そんなこと言ったってさあ、ボーンマスター。僕なら絶対ベリアールサマよりも上手い作戦が立てられたよ」
 ボーンマスターは僅かに肩をすくめる。吹いた風がボロボロの裾を揺らした。
「…ベルアール様にはベリアール様の考えがあるのだ。それはマステリオン様とて同じこと」
「納得できないなぁ」
「理解し、飲み込め。そうでなければ識ることはできぬ」
「わからなくったって知っていることは出来るよ」
「では訊くが、お前が知っている兵法の作戦は幾つある?」
「ざっと……200くらいかな?」
「それだけの知恵も、使う場が解らなければ役には立たぬ。どの策が有効か見極めるためには、理解せねばならぬ」
 滔々と、ボーンマスターは語る。
「…………」
「解ったら、付いてこい。マステリオン様が四天王を送り込むそうだ」
「!」
 アナンシは半ば伏せていた顔を上げた。
「やっと動くんだ?」
「そうだ。……戦況も一転するだろう」
「やったね、これでアスタロットサマのきぃきぃ言う声聴かなくても済むよ」
 髪を揺らし、ぴょこんと岩の上から飛び降りて、アナンシはボーンマスターの後を追う。

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2005/12/12
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