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2024/09/25

 以前書いた「花に嵐」の続き……として書こうとしていた物……の発展系なのですが、場面が飛ぶのと、内容が割と酷い気がしたので、「花に嵐」とは別物扱いにさせていただきます。

 ……ええと、私は、主人公がズタボロになったりする少年漫画が好きです……いや今回負けたりするのはマキシさんではないんですが。

 マキシさんがSなのか女々しいのか。
 ミロクさんの諦めが良すぎるとか。

 そんな感じなので嫌な予感がした方は見なかったことに。

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 それは肩の辺り、心臓よりも少し逸れた胸の左側に、小さな火傷としてあった。
 たった一撃。
 流血はなく、打撲すらなく。
 けれどたったその一撃が、少女の命を奪った。



 許せなかったんだ。
 彼女を襲った鬼が、じゃない。
 それを止められなかった自分が。間に合わなかった甘さが。


 その言葉に籠められた重さも大切さも尊さも、理解しているつもりだ。
 だからこそ軽々しく手を出すべきではないと、先生は言った。
 倫を守るというのは、優しくあることとは違う。
 例えば病を癒すこと、呪いを解くことと違って、失われた形のない物を取り戻すのは、その理由に関わらずとても重い責任が伴う。
 神の力で命を扱うのは、ただの傲慢だ。


 けど助けられなかったのは俺で、見捨てられなかったのも俺だから。
 お咎めなんて関係ない。
 何だってする、身を削って差し出せと言うのなら、いくらでも。

 だから、どうか、どうかもう一度。

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 これはきっと慈悲じゃない。


 許してくれ、なんて言えた義理じゃないけど、それでも君に許して貰う機会が欲しかった。
 助けたいと思った心に、嘘も偽りもないけれど。

 だから、お礼なんて言っちゃいけない。
 そこまで胸を張れるような事じゃないんだ。

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2008/10/22
 雲間

 その男は、最前からずっとそうして、足下の岩盤が無くなった先を――下界に続く中空を――見下ろしていた。いくら見つめたところで神ではなく、透視の力すら持たぬ彼に地上が見えるはずもないのだが、男はゼロニクスがやってきたと気付いてもなお、そうして地上があるはずの場所を見つめている。
「――本当に下界に降りるつもりか?」
 ぽつりと問うたゼロニクスに、男はただ淡々と答える。
「他に行くところもない。此処に長居は出来ぬからな」
 まだ箱の封印が解かれたと知れ渡ってはいない今だからこそ、こうして悠長に話などしていられるが、ひとたび追っ手が掛かれば、追われる身となる男やその眷属は天界には居られない。
「……もう一度訊くが、」
 こちらに視線を向けもしない男に、ゼロニクスは問う。
「俺と共に行く気はないか」
 問いの形を借りてはいたが、それは質問ではなく確認だった。男は雲しか見えないであろう中空へと視線を据えたまま、僅かにだけ眼を細める。やがて、口端を吊り上げる笑い方で――その間さえ男はゼロニクスへ視線を向けはしなかったが――笑って、言った。
「私などを頼るようでは、その名が廃ろう、無頼神よ」
「お前は将だと聞いている。お前のような者がいれば心強い」
「私のような者、がいれば、な」
 皮肉を含んだ笑いを浮かべたまま、男は今度こそゼロニクスを見た。青い視線が交錯する。
 ゼロニクスの言葉は本心で、けれど男が言ったことも本当だった。この男のような力と才を持った者が必要だったが、それは別にこの男でなくとも良いのだった。もちろん、ゼロニクスの目的が彼等を新世界へ導くことである以上、数は多いに越したことはないのだが。
 おそらくは、これ以上は何を言ってもこの男の意志は動くまい。思いながらも、ゼロニクスは食い下がる。
「お前の気性は過去の諍いに執着するのを良しとするとは思えない。復讐にもこの地の支配にも興味がないのなら、俺と共に行くのも悪くはないと思うが」
「確かに報復にも覇道にも興味はないがね。しかし私は新世界とやらにも大して興味はないのだ」

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 頭に触れた掌の温度がじわりと伝わってきて、密かに嘆息して目を閉じた。
 

 ねえ、先輩、俺を幾つだと思ってるの。
 いつまで、こんな子供扱いするつもり?
 あんまり優しいと勘違いするよ。俺はあんたと違って純粋培養じゃないから、つけ込もうとするかもよ。
 あんたが俺の気持ちに気付いてるかどうかなんて知らないけど。

 こんな優しい突き放し方なら、しないで欲しい。

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2008/10/14

 いつもは的を狙うだけのレンズスコープを、いつもとは90度違う方向に向ける。
 まあるく切り取られた世界。

 窓。
 柱。
 渡り廊下の床、コンクリート。
 人。
 人。
 腕。
 背中。
 女みたいに長い髪。

 の、揺れる、背中、肩、が振り返って。

 十字の照準に捉えられた彼は、


「…………の、ヤロ!」
 毒づいて、ゲルブは銃を下げる。
 
 撃ってみろよって顔しやがって。
 撃てないだろって顔しやがって。

 ああそうだよ撃てないよ。撃ったところでこんな玩具じゃ、お前の所にすら届かない。
 影を踏むような嫌がらせ。少しだけ物騒な冗談だ。
 けれどその奥に潜む敵意と悪意を見透かされた気がして、どうにも寒いような気分になる。
 
 なにより銃口を向けられて、それでも思惑を見透かしたように、
 に、と、薄く嗤ったあの顔が網膜に焼き付いている。

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「先輩」
 嗚咽も涙もましてや怒りもその声には決してなかったけれど。

 その声色はあまりにも切羽詰まった胸に迫るものがあったので、彼が泣いているのではないかと心配したほどだ。

「……どうしよう、先輩」
「どうしたんだい」
「すごく苦しい」
「気分が悪い?それともどこか痛い?」
「……痛く、はない。気分も、今はそんなに悪くない。でも、苦しい」



 苦しくてちょっと死にそう。



「いつから?」
 少し上の方から聞こえた声が詰問の調子を含む。ああ大丈夫、そんなんじゃない。人はね、心が痛いだけじゃ死ねないんだよ先輩。
「ねえ先輩」

 あの人は真面目な人だから、少し眉を顰めたかも知れない。


「愛してる触り方ってどんなの?」

 沸いたか、って思ってくれて良いよ。
 解ってるんだ。
 先輩の好き、は like であって love じゃない。

「そういう触り方で抱き締めてよ。そしたら安心、出来る、かも」

 きっと不毛なことを言っている。
 解っていても口にしてしまうのは何でだろう。
 求めているのは何。
 抱いているのは愛情?恋情?

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2008/10/14

 なるほど精神の拘束とはこういうものかと、思う間もなかった、様な気がする。

 最初に圧倒的な何かに引きずり込まれたのは覚えている。事態を理解しかけた頃には既にその「檻」は完成していて、思考と五感を奪われた。
 それからはよく覚えていない。眠っていたわけではないのだろう。夢は見なかった。ただ少しだけ拘束の緩んだ間は微睡むようで、昔のことを思い出していた気がする。五感の拘束が緩んでも身動きが取れなかったから、窮屈だったという印象ばかりが強い。真っ暗で冷えた場所だった気もするが、そう思うのは視覚が無くて静かだったせいかもしれない。

 自由にならない意識の底で、いつか来るかも知れない終わりを夢見ていた。
 ――それが解放にせよ、消滅にせよ。

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2008/10/12
 共鳴

 例えば、雷が、手から離れる瞬間の思考、だとか
 宿した炎の熱の心地良さ、
 振り回す斧の重み、
 水流と心を通わせる感覚、

 そんなもので何となく解ったつもりになっていた。

 みんな凄く重い物を抱え込んでるのは知っていたけれど、
 どんな物を見てきたか、どういう扱いを受けてきたか、
 聴くのと視るのとじゃ、全然違ったよ。

 真っ暗な空も
 おかしな程赤い地平も
 綺麗に更地に還った街も
 流れることを止めた河も
 何も見えない、塗り込めたような闇も
 聴くのより視るのより、感じた方が、ずっとずっと悲しかったよ。ずっとずっと寂しかったよ。

 何より今更嘆かない誇り高い彼等が、
 ずっとずっと、痛かったよ。

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鞄が必要なほどの荷物はありません。
命と体と心と名前。それからあなたへの想い一つ。
それで全部。
それだけです。

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2008/10/11
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