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2024/09/24

 由来はSQ3ですが、1.5通り越して既に1じゃね? というレベルなのであえてカテゴリ:未選択で。
 来週に備えて花屋さんの周りの人の話。おそらく10~20年前に起こったこと。

 

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「――ただいま」
「お帰り。……どこ、行ってたの?」
「ちょっとね、聞き込み」
「聞き込み?」
「ちょっとさ、詳しそうな奴が、アマラントスについて何か知ってるんじゃないかなーって」
「? アマラントスって……あの神殿に生えてたヤツでしょ?」
「そ。――正直なところさ、わたし等はあの草についてなーんにも知らんでしょ。毒草だってのだって、深王陛下のお言葉以外の根拠はないでしょ? アマラントスが本当はどういう草なのか、他に知りようがないけど、もし本当は毒草じゃなかったら?」
「……って、例えば?」
「んー……毒草だと思われてたけど、実はここ100年の間にアマラントスの有効な活用法が見つかって、体の弱い人間のお姫様がそれを利用している――とかそんなことがあったら、なんてね」
「――!! ツツガ、その詳しそうな人に聞いてきたんだよね?なんて言ってたの!?」
「知らないって」
「知らな……ええぇー……」
「神殿に生えてたのはホントみたい。でも昔話で聞くくらいで、どういう草なのか詳しいことは知らないってさ」
「なんだ……そっか……」
「ん。……ねぇタンジェリン、良かったねぇ?」
「何が?」
「もしもさ、アマラントスは人にとっては毒にしかならない花です――なんて言われたらさ、わたし等、明日にでもお姫様を殺しにいかなきゃならないじゃない」

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2010/11/04

 プリバリ女性向け、……今回はその、R-18ってことでよろしくお願いします……

 先日もちすけさん宅のジャンさんとうちの眼鏡バリでエア大航海をさせていただいた際、最後の流れがアレだったので、それを引き継いで。

 
追記:2ページ目追加しました。(10/23)
追記:3ページ目追加しました。(10/23)
追記:4ページ目追加しました。(10/26)

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 裏庭に出て、用意しておいた桶の上に所々に焦げ目の付いたシーツを広げ、バケツの中身を開ける。冷え切った水と共に、ごろりと大きな氷塊が姿を現した。
「出しちゃうの?」
「このままでは大きいでしょう?」
 濡れたシーツで氷を包んで、リヴェルリは立ち上がる。槌で砕いても構わないのだが、リヴェルリや老体の神父様が槌を振るうよりはこちらの方が早い。
「そこを、動かないでくださいね」
 そう念を押して、リヴェルリは星術器を起動させる。――今度は先ほどよりも出力が要る。そう、例えば魔物を撃つときのそれのような。
 今度は数歩離れて氷塊に手を翳し、リヴェルリはエーテルの動き、その中へと意識を下ろしてゆく。揺らめくエーテルを含む粒子達の宿す、正と負の2つの力。
 今度はもっともっと細かい制御を行わなければならない。陽子の縛鎖から逃れようと激しく動き回る電子の動きを制御する。作るのは電離の道、ほんの僅かな正と負の差――そうして制御していた電子を一気に解き放つ。
 手袋に包まれた手から放たれたかに見える雷撃が、ぱっと真昼の庭に走る。ジグザグの軌道を描いて電撃が氷塊に達した瞬間、激しい音を立てて、シーツに包まれた氷塊が弾けた。
 大きな音に、びく、と背後にいた少女が肩を震わせたが、こればかりは仕方ない。
 エネルギーを持った雷撃が、高純度の水からなる氷に流れる。だが、高純度の氷は電気を通さない――結果、行き場を失ったエネルギーは、衝撃と音、それから熱に変換される。
 ――多分、リヴェルリのような方法でエーテルを扱う者は少ない。異端なのだ、と思う。けれどリヴェルリは、この方法以外に世界の法則を利用する術を知らない。
 水蒸気の湯気を立てるシーツを剥いでみれば、氷塊には白い亀裂が幾つも走っていた。布で包むようにしながらブリキのバケツに氷だけを移すと、氷塊はバケツの底に触れた瞬間、あっけなく砕けて細かな粉と子供の拳ほどの塊にわかれる。
「あの、ありがとうございます、シスター」
 バケツの中に白く光る氷塊を覗き込んで、少女が言う。
 いいえ、と笑って、リヴェルリは立ち上がった。勿論、バケツを持って。
「では、ヤラッカの所に急ぎましょうか。―― 一人では重いでしょうから」

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2010/10/21

 はやく、と急かすようにリヴェルリの周りをせわしなく歩き回っていた少女は、リヴェルリが星術具を持ち出してくるのを見ると、すぐに机に齧り付いた。
 ほほえましさに内心だけで小さく笑い、リヴェルリは手袋をはめた手で机上のバケツ――先ほど汲んできた水が7分ほど入っている――を土間へと下ろした。彼女にはこの方が覗きやすいだろう。
 そこを動かないでくださいね、そう念を押して、バケツの水の上へと手袋を嵌めた方の手を翳す。
 ――熱気と冷気というのは、「熱」という共通項で括れば、両者はさほど遠いところにあるものではない。ただ世界を構成する微細な粒子の振動が大きいか、小さいか。ごく穏やかな震えに満たされたこの世界では、そのどちらかに振動を少し傾かせるだけで、大きなエネルギーを生む。
 だからリヴェルリは、この温い空気の中に僅かに含まれた、冷気の属性を帯びたエーテルを集める必要はなく、ただエーテルと、微細な粒子の振動を制御してやるだけで良い。
 エーテルの流れを読む――体の周りを流れる緩やかなそれ。その一部だけを滞らせる。掴み取ったエーテルの、その注意してみなければ解らないほどの微細な震え。ここから先は少し集中が必要だ。必要なのはほんの少しだけ。水面の中心に、冷えたエーテルを集める。そのまま宥めるように、震えを、粒子の波動を落としてゆく。少しづつ――決して急いではならない。静止に限りなく近くなった粒子は、近接粒子からエネルギーを得ようとする。全てを均一にしようとする世界の法則が、凍える温度を水の中に伝えてゆく。
 ふ、と水面に僅かな歪みが現れた。それはすぐに白い曇りを帯びて、バケツ中に広がってゆく。リヴェルリが星術の発動を止めてもそれは僅かな間拡大を続けたが、やがてバケツの縁に僅かに水を残した状態で安定した。その周囲だけが水のままの状態のバケツを持って、リヴェルリは裏口へと向かう。着いていっていいものかどうか迷っているらしい少女に、来ますか?、と声を掛けて、リヴェルリは裏口の戸を開けた。

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2010/10/21

「――シスタ、シスター!」
 煉瓦積みの低い塀を回って亜麻色の髪の少女が駆けてくる、否、少女と言うにはまだ少し幼いかもしれない。年の頃は6つか7つか、その辺りだろうと、リヴェルリは勝手に思っているのだが。
「どうしました?」
「あのねシスター」
 教会の敷地に植えられた強い香りの香草(これは干して物置の防虫剤にする)を摘む手を止めて、リヴェルリはかがみ込んで少女に視線を合わせる。随分急いで駆けてきたのだろう、肩で息をしている少女は、けれどそんなことは気にもならないのか、ほとんど同じ高さになったリヴェルリの濃い茶色の瞳を覗き込むようにして訴えた。
「さっき、坂の所でヤラッカが転んだの。そうしたら立てなくなっちゃって足がすごく腫れて、お兄ちゃんが氷持ってきて、って言うから」
 そこまで言って、彼女は大きなブリキのバケツをリヴェルリに差し出す。
「だからシスター、氷ください」
 差し出されたバケツを見下ろし、ついでリヴェルリは少女を見る。不安と焦燥の漂う表情に安心させるように微笑み返して、リヴェルリは少女にとっては一抱えもありそうなバケツを受け取った。
「解りました。少し待ってくださいね」

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2010/10/21

 以前書いた「Collapse」の直後にあたるお話です。
 ええとあれだ……初夜っていうのかこれ……

 本番はやってない安心仕様です。

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 花屋さんの2~3年前の話。
 書きためてから……と思ってたんですが、それをやってるとテンション的に書き上がらないらしいことが解ってきたので、宣言が嘘になっちゃいましたがとりあえずその2。
 気候と建築相関萌え。

 しかし本当にすっきりしない山のない話になりそうです。

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「この国は良かった」
 馬車で国を出るのだというその人は、書籍も資料も何一つ入っていないだろう、随分小さな鞄を足下に置いたまま、遠くを見て言った。
「金を貰って……他人の金で研究することが卑しいとされない。すぐには役に立たないことを研究しても責められない」

「錬金術師などと皮肉な名を誰がつけたのだか。笑えることに、金を作るどころか、我々は金食い虫だ。研究には金が要る」

「だかこの国は、そんな我々にも居場所をくれた。……だから残念だよ。この国は、良い国だった」

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「ケン、」
 そう振り返った彼の肩越しには、低い位置に大きな月が浮かんでいた。翳りを帯びた黄金色の真円、それを従えるのではなく、まるで寄り添うように彼は立っていて。
「また来ようね」
 さわりと梢を揺らめかせた風がゆるやかに彼の金色の髪を揺らして、けれどそれは太陽の下のように輝くことはなく。
 まるで昼間の光の支配から解き放たれたように、彼の姿は穏やかな一枚の絵のように溶けこんでいて、それを目にした瞬間、胸の奥に締め付けられるような疼痛を覚える。
 その痛みの名を、ケンは知っている。知っていて、頷いた。頭半分背の高い彼を見上げて、はい、と頷く。

 ――嘘だ。

 そう静かに身の内からあがる糾弾の声を聴いて、ケンはゆっくりと目を閉じた。

 ――また、なんて無い。

 太陽の強い輝きのない夜空の下でも、変わらずカナトはカナトだった。けれどだからこそ――彼を光の下へ戻さなければならない。彼は決して、この弱々しい月の光に甘んじていていい存在ではない。
 だからケンはこの気持ちを押し隠して、カナトの影になる。
 また、は無いのだ。
 あったとしても、その時の二人の関係は、きっと今のものとは違ってしまっている。
 ただの友達ではいられない。
 今のこの時期、この距離がギリギリだ。ケンは既にそうさとっている。
 これ以上は近づけない。――これ以上長くこの位置にいれば、いずれケンは踏み出してしまう。彼にもっと近付こうとしてしまう。
 だからケンは望んで影になるのだ。力強い陽光の下にある彼の最も近くで、けれど彼に触れることを許さない位置で。
 だからこれは、二人がただの「友達」で居られる最後の夜だ。
 そう思ってケンは瞳を開く。
 穏やかな月光の元で、ケンの答えに心から微笑む彼を、眼に焼きつけた。

 この夜は二度と来ない。

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2010/10/04
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