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2024/09/24
 氷解

 相変わらず女性向け要素高含有なので追記に。

 温いですが事後っぽい描写があるのでお気を付けください。
 なんだかいつにも増してグダグダ感が漂いますが……そういう意味でもお気を付けください……

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「……何でさぁ、そんなこと調べんの?」
「何故……と言われましても。これも私の仕事ですから」
「シスターの?」
「そうです」
「……聞くけど、ここの神様は世界を創った……って事になってるんだよね」
「はい。聖書にはそのように書かれておりますね」
「……じゃあさぁ、別に調べなくてもよくない? だって、神様が作ったもの、なんだからさ。妙なことがあって当たり前じゃん」
「……それは、少し違うと思います」
「どう違う?」
「神が世界を作りたもうたのなら、その世界を正確に理解することも、信仰なのではありませんか?」
「…………」
「信仰はオカルトではありません。何が入っているのか解らないパンドラの箱――ではいけないのです」
「開けて出てくるのが災厄でも?」
「ツツガさんは、『パンドラ』が箱を開けたあと、どうなったか知っていますか?」
「……知らない」
「罰されなかったのですよ、彼女は。もっとも、彼女は私達の神話ではありませんが」

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2010/09/25

 花屋さんの昔(?)話。
 多分合計4~5回で完結する予定……
 オリジナル要素がかなり強いのと、あまりすっきりしない話になる気がするので、追記で綴ります。

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 昔々、パンドラ、という名の女性が居たそうだ。
 最初に作られた女性である彼女は、神々から様々な贈り物を授かった。美しさ、歌の才能、人を癒す技術、……それから一つの箱と、好奇心。
 そうして人の世界に送り込まれた彼女は、けれどある日、好奇心に負けて、開けてはいけないと言われた箱を開いてしまう。
 ほんの僅かに開いた箱の隙間から溢れたのは無数の災厄で、パンドラは慌てて箱を閉じたが、最後に箱の中に残った一つ以外は、世界に散らばってしまった後だった。
 残ったものが何だったのかはわからない。先の全てを予知してしまう能力だったとか、絶望だけは箱に残って世界に散らなかっただとか、或いは箱の底に残ったのは希望で、だから世界には絶望があるのだ、とか。色々な説があるけれど、パンドラの箱から一番最初に飛び出たと言われている物はいつも同じだ。
 ――疫病。すなわち、痛みと苦しみ。

 口の広いガラス瓶に溜まった、茶色の粘土のような樹液を軽く日に透かして、彼は眼を細める。
 時折ふと思い出すのだ。

 ――もし、神話のように、この世の全てが誰かに作られたものだとしたら。
 ――痛みから人々を解きはなってくれるこの花は、はたして救いの手なのか、堕落への誘いなのか?
 ――お前はどう思う?

 多分、と彼は独白する。
 そのどちらでもあるし、どちらでもないのだろう。
 ただ願わくば、こうして今薄い花弁を開かせているこの花が、憎まれる使い方をされないことを。

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「ファーラ様は、……ミュルメクス様のように、国をお治めになるために育てられたお方ではありませんから」
 色の薄い金髪の頭を俯かせて、青いエプロンドレスの少女は言う。
「ここに来たときもそうでした。ファーラ様は貴方のように戦いを身近に置いてお育ちになった方ではありません。本来、易々と迷宮に入ることが出来るお方ではなかったのです」
 元よりさほど身の丈のないアキツだったが、少女の背丈はそれよりも尚低く、俯いた表情を伺うことは出来ない。アキツはただ、華奢な手がぎゅうと握られ、白いエプロンに皺が寄るのを見ていた。
「ですがファーラ様はそれでも迷宮に挑まれました。何度も無理をなさって、お命を危険に晒したことすら」
 将軍様からすれば愚かに思われるでしょう、と少女はそこで一度言葉を切って、握っていたエプロンを放すと、目元を拭う。その拭った手でエプロンの皺を押さえつけて伸ばすと、木綿の生地には小さく水滴の染みが残った。
「ですが、当時のファーラ様にはそうするしかなかったのです。そうしなければ、誰も付いてきてくれないと仰いました。……今も同じです。国にはファーラ様の味方になってくださる方がおりません。ですからまずご自身が、国をお治めになれるだけのお力を付けようとしておられるのです。……ご無理をなさってでも」
 ふと、少女が顔を上げた。潤んだ瞳が一度だけ瞬いたが、涙はこぼれなかった。薄青の瞳に悲しみと憤りを当分に宿して、少女はアキツを見上げる。まるで仔猫を庇って毛を逆立てる母猫のようだと思いながら、アキツはそれを笑う気にはなれなかった。
「……昼間は、ファーラ様のチェスにお付き合いくださりありがとうございます。将軍様の軍略はためになると、ファーラ様も仰っておりました。また機会がありましたら、是非お相手して差し上げてくださいますよう、私からお願いいたします。……ですが今は。ファーラ様は先ほどお休みになったばかりなのです。どうか、お引き取りください」

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「…………」
「……中に、こんなもんが詰まってるなんて思わなかっただろ」
「え、あ、そうじゃなくて! 私ね、それ、見たことあるんだ」
「それって、……これをか?」
「うん。多分、同じ物だと思う。……ハイ・ラガードの世界樹で。私、去年までそこにいたんだけど、樹の天辺の方に、お城が引っかかっててね。壁とか剥がれたところからそういう、中に金属の糸が入ったのが沢山見えてたんだ」
「…………」
「リーダーも、エトリアで見たことがあるって言ってた」
「リーダー?」
「あ、ラガードで私が入ってたギルドのマスター! 昔エトリアに潜ったことがあるんだって。その人が、地下に埋まった街の建物の壁の中に、同じようなの見たって言ってたの」

「だから……その子、ほんとに世界樹から来たんだな、って」

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「ねえ、この島ってさぁ、溶けちゃわないのかな」
「え?」
 いつもの人を食ったような冗談とは違い、本気で不思議そうな声に、貝を拾った姿勢のままタンジェリンは振り返った。
 曇り空の上から鈍い陽光の差す浜には、様々なものが落ちている。削れて穴のあいた石、流木、角の取れたガラス、深海から浮いてきた貝殻。赤茶色の石ころを、荒れて青黒い波の間へと蹴飛ばして、ツツガはぼんやりと海と空の境を見ている。
「溶けるって?」
「だってここ、砂だらけじゃん。昨日みたいな嵐が何度も来たら、全部海に溶けちゃったりしないのかな、って」
 へし折れた椰子の葉を踊り子がやるようにひらひらと振りながら、波打ち際を歩いてくるツツガを待って、タンジェリンは首を傾げた。
「島が溶けちゃうっていうのは聞いたこと無いなぁ」
「そっか」
「きっと溶けるのと同じくらい、砂が積もってくんじゃない?」
「溶けるのと積もるのが一緒に?どうして?」
「それはわかんないけど……」
 困り顔になりながらも、タンジェリンは両手を開く。薄紫色の二枚貝、色の抜けて白くなった珊瑚の欠片、くるくると巻いた殻に薄茶の線の入った巻き貝。
「こういうのが落ちてるんだから、積もってるっていうのはそんなに間違ってないと思うな」
 納得したようなしていないような顔でツツガがそれを眺める、その後ろから近付いてくる仲間を認めて、タンジェリンは大きく手を振った。
「アクリス!こっちだよ!」
 微かな駆動音と砂を踏む音と共に近付いてきたアンドロの頭の上には、1羽のカモメがとまっていて、ツツガがにやりと口端を上げた。
「何、お前仲良くなったの?」
「カモメだー! あ、」
 嬉しそうに言ったタンジェリンが手を伸ばそうとするが、距離が近付くより先に、カモメは翼を広げて飛び立ってしまう。随分軽くなっただろう頭を傾けて、アクリスが空に飛び立ったカモメを視覚センサで追った。
「タンジェリンは仲良くなれなかったねぇ」
「うっ……ツツガだって仲良いわけじゃないくせに」
「わたし?わたしは仲良いよ?」
「ホントぉ?」
「疑うんだー。いいよ、見せたげる」
 言って、ツツガは椰子の葉を片手に持ち直すと、指をくわえて高く口笛を吹く。高く、僅かに音の高低を交えながら、無人の浜風に乗って波間へと響く音。
 やがて、頭上の鳥影に変化があった。潮風に乗ってゆらゆらと翼を広げていた影が、俄に角度を変えて舞い降り――ツツガの僧衣の腕へと降り立つ。頭上で次々にカモメたちが翼を返すのを見上げて、タンジェリンは思わず感嘆の息を吐いた。
「……凄い。」
「鳥くらいならね。ってか重いなこいつ」
 言いながら彼女は腕を振り上げた勢いでカモメを飛び立たせる。
「ホントに仲良いの?」
「ううん。ちょっと習性利用して呼んでるだけ。まあそっちの方は、ホントに仲良いのかもしれないけどね」
 いつの間にか、飛来してきたカモメをそれぞれ肩と頭に載せているアクリスを見遣って、ツツガは笑った。

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「……それ、本気か?」
「君にとっては残念ながら、私は誠実を旨としていてね」
「ああ知ってるよ! けど……あいつに俺の後を継がせるって? お前、そりゃ……」
「…………」
「俺のこの足と、目を見て、……それでもあいつに頼むって言えるのか」
「……君の足のことは悪かったと思っている。だが、あの後私なりに出来ることは精一杯やったつもりだ。二度とあんな事は、」
「言うな。……いいんだ、これはあんたの所為じゃない」
「……お前の気持ちは解るつもりだ。幾ら対策を講じたところで、不安も懸念も拭えん。だがこの役目はどうしても必要なんだ。誰かがやらねばならんし、しかも人数は少ない方がいい」
「……解ってる。解ってるよ。罌粟のモルフィンで救われる奴がどれだけ居るかってことも、お前がどれだけ頑張ってくれたかも。他でもない俺が救われたんだ。……解ってる」
「……すまんな。だがこれだけは聞いてくれ。私はお前だったから頼んだのだし、あの子だから頼むんだ。他の誰にも頼めんよ」
「…………」

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 じゅうじゅうと鍋の底で透明な液体が沸騰している。
 厨房に満ちる甘い香り。
 木べらで鍋底を掻き回すと、ゆるく粘性を持ったそれはとろりとへらの跡を残した。とろとろと煮詰めるカラメル。鍋底から沸き上がる水蒸気。
 立ち上る熱気が頬を炙る。
 構わずメリッサは鍋底を睨み付ける。

(ファーラ様は、以前と比べて、色々な人とお話しするようになった)
(演じる必要が無くなって、人を怖がらなくなった)
(このギルドの誰もが、いいえ、アーモロードへやってきてファーラ様と話した人全員が、演じないファーラ様を知っている)
 
 喜ばしいことのはずなのに、メリッサはそれが悔しい。

(解ってます。……嫉妬だなんて)

 浅ましい。恥ずかしい。なんて幼くて勝手な感情。
 解っているのに、胸の奥からは沸々と煮え立つような感情が沸き上がってくる。
 粘ついて、どろりとして。
 汚い、感情。

 泣きそうになりながら掻き回した鍋の底で、じわりとカラメルが色づきはじめる。甘さに混じる苦い香り。

 ああどうかこの火を止めて、これ以上苦く焦げ付く前に!

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2010/09/07

 はい。
 カーネーション……いや、コスモスの八重咲きですよ、それは。
 そうです、八重もあるんですよ。
 出回りはじめたのはそんなに最近でもないんですがね。珍しいし、派手な姿形だから結構人気なんです。俺は一重もらしくて好きなんですけど、黒やらオレンジ、こんな八重咲きまで、いろいろあるのがコスモスの良いトコですよ。
 それはスカビオサ。蕾の状態でも可愛い姿してますよ。
 ……派手なのをお探しですか?
 珍しいの。お贈りになるのは女性の方ですか? あ、ご友人に。
 そうですね……あまり出回ってないって意味ならこっちの……ああ、それですか。
 それもバラですよ。リンゴの花に似てますけどね。ロサ・カニナって、この品種からロースヒップが取れるんです。
 はい。鉢花もありますよ。棘があるんで、贈り物としては敬遠されがちなんですが、大丈夫ですか?
 解りました。じゃあお包みします、少々お時間頂けますか。お茶をお淹れしますんで、どうぞこちらに。

 あ、大丈夫ですよ、何です?
 害虫駆除ね……種類と数は?
 ……芋虫でそれくらいの数なら、一匹一匹潰した方がいいですよ。
 ああ、勿論殺虫剤も取り扱ってますけど、下手に使うと害虫の天敵も殺しちまうことになりかねませんから。そうすると来年もっと増える。数が少ないうちはお勧めしません。
 ……そうですかね?
 はは、売れればありがたいですけど、それよりもお客さんがその庭木と上手く付き合ってくことの方が大切ですから。
 はい、出来ました。
 はい。お買い上げありがとうございます。

 ……え?
 ああ、叔父をご存じなんですか。
 はい。……話ですか?俺に――?

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