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2024/09/23

 驚きましたよ。
 てっきり泣いてるかと思っていましたから。

 あの子との付き合いはとても短いし、特別会話をしたこともありません。
 彼女のことなんかろくに知らない。
 けれど、未だ生まれたばっかりで、良くない事なんて全然知らない、雛鳥みたいなものだと思っていたんです。
 何が起こったのか解らなくて、不安でたまらなくて、目に涙をためながら、元居た安全な巣に帰してと、そう言うのが雛鳥だから。
 
 だから、てっきり泣いてるかと思ったんです。

 何が起こったのか解らなくて、不安でたまらなくて、泣きそうになりながら、でも君は何が起こったのか、自分に何が出来るのか、見極めようとしていたなんて。
 
 なかなか出来ることじゃないでしょう?
 あんなに小さくてか弱いのに。
 女の子は強いですね。

 だから守りたくなるんです。

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 その人の手は、色が白くて
 頭を撫でてくれる掌は柔らかくて、
 抱き締めてくれる腕はしっかりした力があって、
 けれど男の人に比べたらずっとほっそりしていて、
 何より仕草の一つ一つが優しくて、

 なのにちっとも頼りないって感じはしなくて

 私もああなれたら、
 守られるだけじゃ、なくなれるのかな。


 私に出来る事って、何だろう。

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2008/10/11

 使っちゃダメ、じゃなく

 持たなくて良いよ、でもなく

 触るな、ではもちろんなくて


 ただ、君がそんな物使う必要がなければいいって
 なんて言ったら、伝わるかな。

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2008/10/10

「……で、どうしようか、あれ」
「ホルストの同属なんだから、ホルストが話し付けてくるべきじゃないの?」
『ボーチュンッ』
「そういうのは苦手なんですが」
「誓約書でも書かせてくればいい」
「手がありませんよ」
『ボーチュッ』
「それが狙いだ」
「……シメてこいよ。さっきので十分かも知れねぇが」
「そうそう、ちょっと凄めば大丈夫」
「それこそ私以外の方が適任のような気がしますが」
「なんだ、私の案は却下か」
「端から通らないのが解ってるなら言わないように」
『ボーチュチューンッ!』
「いいから行ってこい、俺は腹が減ったんだ、こんな面倒事はさっさと終わらせたいんだよ」
「…………まあ、確かにお腹は空いたかも」
「そういえばそろそろ日が暮れるな」
「……そうですね」


『ボーチュッ、チュッチュ』

『ボーッチュンッ』

「…………」
「……」
「…………」
「…………ところで、この辺りに唐揚げを作れそうな設備はあると思いますか?」
『ボッ!?』
「……いや、この時期ならば鍋だろう」
『ボチュッ!?』
「丸焼きで良いじゃねぇか」
『ボボボ!!』
「香草を食べさせると臭みが消えるって言うけど、野菜はどうなんでしょうね」
「効果があると良いですね」
「流石にカニは喰う気にはなれなかったからな」
『ボーチューンッ!!?』

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 鬱蒼と茂った夾竹桃の尖った葉の隙間を、そよりと春の夜風が抜けてゆく。さほど四季のない常春の天界だが、それでも宮殿から東は地上の暦と殆ど同じに花が咲く。温んだ風にか細く混じった声を聞きわけて、磨かれた鋼のような色の髪をした彼は僅かにだけ顔を上げ、歩みを止めた。うっすらと暈を被った月の光が、褐色の肌と、その額に埋め込まれた人ならざる証を照らしている。彼は少しだけ眼を細めた。
 遠慮がちにさわさわと茂みの葉を揺らしてゆく風精を呼んで、彼は風を引き寄せる。お呼びとあらばと楽しげに(大体の場合、神の手足となるのは彼等にとって名誉だ)応じた風精は、一瞬風をよく孕む衣装をつけた女の姿を取ってから、その衣を勢いよく翻して、よりにもよって突風を呼んだ。
 ごう、という音に、女の軽やかな笑い声が混じる。けれど肉体から発せられていない声は、彼の求める音を掻き消したりはしなかった。
 葉擦れの音と風の音、背後にはためく自身の衣装のたてる音に混じったその声を、彼は聞き逃さない。
ほんの僅かな間に風は収まり、なびいていた紫紺の布地もはたりと彼の背中へ落ちた。
 未だゆっくりと周囲を飛び回る風精達に小さく礼を言い、彼は声の方向へと足を踏み出した。

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 朝には鳥の歌を聴き
 昼には獣と戯れて
 夜には星の明かりの下で、土と大樹に抱かれて眠る

 喉が渇けば泉を捜し、腹が空いたら木の実をもいで
 心躍れば呵々と笑って、胸が痛めば涙を流す

 腑の煮えそうな思いがあれば、仲間の獣と取っ組み合って
 それでも収まらないときは、ひとり虚空へ向かって叫ぶ


 赤い瞳と金色の髪
 小さく無邪気な異端の神様
 彼の頭上には角がふたあつ
 黒くて大きな角が二本

 それがあるから無邪気な神様
 友は野山の獣だけ

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 海には悪戯な生き物たちが沢山住んでいて、船を惑わせたり、嵐を呼んだりする。でもそういう海の上に出てくる者と違って、海の底に住んでいる者も居て、そういう者は、海の上で死んだ漁師や船乗りの魂を籠に詰めて、深い海での明かりにするのだそうだ。
 特に嵐の夜には魂が怖がってひゅうひゅうと悲しい声で泣くのだそうで、そんな声は聴いたことがないと笑ったけれど、彼があんまり真剣に言うものだから、ある日信じられないくらい海が凪いだ日に、沖の急に深くなるところまで出て、海の底へと潜ってみた。
 たなびく海藻の種類が変わって、傍らを行く魚の種類が変わって、それでも更に深みを目指して、太陽の光が届かなくなって、目指す方向には何も見えなくて、やがて魚の姿が消えて、だんだん息が苦しくなって、とても暗くて冷たくて寂しくて、怖くなって底に辿り着く前に戻ってきてしまった。
 ずっと深いところにぼんやりと明かりを見た気もするけれど、幻だったのか、光る生き物だったのか、それとも彼の言うとおり船乗り達の魂だったのか、……解らないから結局誰にも話さなかった。

 箱の中は、深い深い海の底に似ていた。

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2008/09/14

 ある島に漁師がいた。
 彼は島に住み着いた人魚と仲が良く、庭の林檎が実ると、それを沢山船に積んで海へ出た。人魚はそれを喜んで、島へ幸運をもたらした。
 人魚は魚の群れが近づけばそれを教え、嵐が来るなら風にのせて警告を歌った。海賊がいれば進路に嵐を起こし、人を喰う魚が迷い込めば沖へと追い払った。

 だが、ある時島に災いが降りかかった。彼の家族も病に倒れ、兄弟は皆船乗りになって、島を出て行った。遂に末っ子の彼も船乗りになって、島を出て行くことになった。

 島を出る前の日に、彼は林檎の枝を一枝持って、入り江の上の崖に立つと、人魚に向けてこう言った。
 この枝がすっかり成長すれば、また林檎が実って熟し、下の海へと落ちるだろう。
 そうして彼は島を出て行ったが、人魚は島を守り続けた。


 ある日、島に大きな嵐が訪れた。
 嵐は島にいた悪い獣を全部巻き上げてさらっていった。
 けれどその日を境に、人魚は島から消えてしまった。
 林檎の木がすっかり育って実った林檎が熟しても、人魚はついに林檎をとりに戻っては来なかった。



 長い長い年月が経ち、林檎の木は枯れてしまった。
 島も波に削られて、小さな砂粒が積み重なって深い海を埋め、島は陸地の一部となり、やがて、

 誰にもそこが島だったと解らなくなってしまった。

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「ねえ、」
「なんだ女ホイホイ」
「止めてくれないかその呼び方!」
「事実なのだからしかたあるまい」





「仲良いなぁ、あの二人」
「……そうか?」
「うん。ホイホイ、って所は秀逸。と言うわけで今回はミロクに一票」
「そりゃずるい。俺だって今回はミロクに賭けたい」
「今回というか、全体的にこのネタ関係ならケルベーダはホルストに賭けないでしょ」
「……あの」
「なあにー?メリルちゃん」
「ホルストさんとミロクさんは何で喧嘩しているんですか?」
「あー、メリルちゃんは気にしなくて良いの。ちょっとほら、からかいあってるだけだから。こっち来る?」
「子供ならともかく、俺は寄る女を側に置いていたあいつの神経が知れない」
「そういうことは言わない。大体ケルベーダだって十分人間ホイホイだったじゃないか。引っかかったのは女の子じゃなくムサいチンピラばっかりだったけど」
「……ケルベーダさんは女の人が嫌いなんですか?」
「嫌いじゃないけど別に好きじゃない、ってとこでしょ。女とは殴り合い出来ないから」
「でも、クレアさんとは仲が良いですよね?」
「それは私とは本気で拳を交わせるから」
「勝手に人を語るなよ」
「でも事実でしょ?」

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 猟犬

 ぞわっとした感覚が首の後ろ辺りを駆け上がってきて、慌てて伏せて頭を上げたその斜め上辺りを、青白く発光する物体がもの凄い勢いで飛んでいった。
 声を上げる間もなく、爆発音。
 なんてことやってんだあいつは。
 もうもうとたっている土煙の所為でよく見えないが、どうやら雷で出来た矢は獲物ではなく地面に着弾したらしく、先ほどより激しく土煙が舞った。その土煙の中に、四足歩行するやたら大きな何かの影が一瞬見えて、それを目聡く見つけたのか何なのか、斧を放り出した誰かさんがさっきの矢の弾道を追うように飛び出していく。
 いや待て待て待て、何で本気モードなんだ。

「おい!あくまで捕まえるんだぞ、絶対殺すなよ!」
 いくら羅震鬼で、マキシが討伐の使命をおびていて、彼等人里で悪さを働いていたとしても、命は命だ。たった一つしかないものを、容易に奪うことは出来ない。一寸の虫にも五分の魂と先人達も言っている。
 …………って、そう説明したハズなんだけど。

 遠くの方で爆炎があがる。ああ、やっぱり連れてくるんじゃなかったかも知れない。メリル達と同じように、どこか遠くに待機させておくんだった。

「皆調子に乗りすぎてるなぁ」
 いつの間にかマキシの横に並んでいたクレアが言う。
「どうやって捕まえるか、作戦まで立てたのに。困ったものだ」
 結果的には袋小路に追い込めているから良いけれど。そう言ったクレアだって、実はあの羅震鬼を追いかけたくって仕方がないのをマキシは知っている。ただ、あの3人が追い込んだ羅震鬼が逃げないよう、人里を背後にしたここに残っているだけだ。

 力こそが全てという弱肉強食の法則に生きる彼等は、獲物を前にすると、まるで猫じゃらしにじゃれつく猫のように、楽しげに獲物を追う。それこそ、我を忘れて全力で。

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2008/08/13
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