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2024/09/23
 神羅

 欲しいのは世界の秘密。
 誰も知らない世界の真理。



「……随分、大袈裟ですね」
 試験管を洗いながら、アスエルは言う。言ってしまってから、これは随分失礼なことを言ったんじゃないかと気付いたが、当のラティエルはいつもの得体の知れない笑顔で、大袈裟なもんか、と軽い調子で反駁した。
「研究なんてのは、何だって『最初に識ること』だ。記録、検証、実験、考察、地道にそんなのを積み重ねて、そうして研究者は初めて、世界で誰も知らなかった秘密を知る権利を得るんだ」
 逆を言えば、彼は続ける。
「研究の目的なんてそれだけだ。特に基礎研究なんてのはね。発見なんてもののほとんどは直接役には立たないことで、精々が仲間の研究者が他の研究をやるのに役立つくらいだ」

「だが、もしも君が世界の真理のひとかけらを識る、それだけのために貴重な時間を捧げるというのなら、私は喜んで君を私の研究室に迎えようじゃないか」

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 神羅

 形にならなかった話の断片を放り込んであるファイルを漁っていたら、うっすらと書いた覚えがあるようなないようなエロ本じみた話が出てきたので、出来心で手直ししてあげてみます…………


 ええと、お互いにとって不幸な擦れ違いが起きないように先にことわっておきますが、

 サイガ×アレックス です。

 今回ばかりは18禁とさせていただきたいと思います。
 18禁解禁になっておられない方はご遠慮ください……と言っても拘束力は全然ありませんけど。でも、とりあえず解禁になってない方は、書いた方はそれなりの理由があって18禁にしてるんだって事を考えた上で行動してください。

 手直ししてあっても、書き慣れない人が昔に書いたものですので、いろいろ粗的なものが目立ちますし、正直1行目初っぱなから爆弾です。多分笑うところです。
 きっちり仕上げようと思ったんですが、やっぱり途中で力尽きてしまったので中途半端なところで終わってます。


 あ、管理人が大変いたたまれないので、この記事に関してのメッセージはできるだけご遠慮ください……!
 一応お叱りとか指摘は受けますが、多分まともに返信できないと思います。

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 神羅

泣いて良いよ。
そんな優しいことでも言えたら良かったですね。

でも言えないんです。一度選んだら、貫き通さなければならないことがあるでしょう?
僕は君を煽って叱咤して奮い立たせることしかできない。そうすることを選んだんです。

だからリュウガ、今更君に甘い事なんて言えない。

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2009/03/25
 神羅

 青い薔薇を求めたのだという。細工物ではない、生きた薔薇を。
 けれどそうして生まれた薔薇は、青く美しかったがとてもとても弱くて、実験室から出すことは出来なかったという話だ。





 彼女の背中には翼が三対生えている。純白のそれは神々しくすらあるのだけれど、どの翼も萎縮したように小さい。それもそのはずで、この翼は風を掴んだことがないのだ。
 大きすぎる魔力故に脆弱な体は、魔力の解放に耐えられない。だから飛べない。
 誰もが畏れ、敬い、讃えるこの翼は、けれど彼女に何の自由も与えてくれない。
 薔薇色の絹地のドレス。綺麗に梳いた髪。細かい輝石と金属を吹き付けて光らせたリボンとレース。真綿にくるむようにして、悪い物は塵一つ存在させない世界。けれど、与えたかったのはそんなものじゃない。
 空を与えたかった。澄み渡る蒼穹を。どこまででも空を駆けてゆける自由を。
 けれど実際に与えられたのはこの地上で一番空に近い城だけだ。細い柱で支えられた回廊は、夕日の長い影が落ちるとまるで鳥籠の影のようで、見る度に痛々しい気分になった。 遠い場所の話をしながらいつか一緒に行こうと言えば、彼女はいつだって頷いたのだけれど、大きな瞳を覗き込むと酷い悲しみと無力感に襲われるのだ。


 そこにあるのは、深い諦めと澄んだ絶望。

 青薔薇は、ガラスケースの外では生きられないと知っている。

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 神羅

肉は灰となり大地と空と共に

魂は煙となり天の神と共に

心は風となり愛しい人の翼と共に



「かくあれかし」

 かくあれかし、司祭の言を、聖堂に集まった人々は唱和する。彼もそれに倣って聖句を復唱した。
 もう何回となく繰り返してきた祈りだ。運ばれてゆく棺の数だけ、彼に縁のある人は減ってゆく。こうやって減っていって、最後に残るのは多分自分なのだ。
 誰かの棺が燃やされる度、考えないようにしていたことを考えてしまう。
 もしその時が来たら、自分のためにこの祈りを唱えてくれる人は、誰か居るのだろうか。
 

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 神羅

 野望があった。今となっては幼い、けれど切実な野心だった。
 好奇の眼と異端の誹りから逃れられない己達には、認めてもらう術は力を示すしかなかった。

『強くなろう』

 それは望みであり誓いでもあった。口に出したことはなく、けれど二人ともに願いは同じだった。
 己のために。たった一人の血を分けた相手のために。

 ――強く、なりたい。

 それが幼かった自分達の、たった一つの願いだった。

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 神羅

 白いノートに、赤い字がだんだん増えていく。一桁二桁三桁四桁……
「……今月も赤字」
 余計な出費ばかりが嵩んでいるとしか思えない帳簿は、もう随分と黒字を計上した覚えがない。というか、一度もない。いや、やっている内容が内容だから、黒字になるはずもないのだけれど。
 それにしたって、とアスエルは帳簿を眺める。右側に積んである領収書と借用書の山からはあえて目を逸らした。学究の徒としてはあるまじきであるが、金勘定からくらいは目を逸らしても良いだろう。
 あ、今月は光熱費が妙に嵩んでる。濾紙の消費も激しい。もうこの時期サンプル分離は終わったはずじゃないですか。また蒸留水でコーヒー入れましたね。後器具拭くときは濾紙じゃなくて雑巾使ってくださいよ!
 後で文句を言わなくてはと思いつつ、次の領収書を手に取る。帳簿に数字を書き込もうとしたときだ。
「アスエル君、ちょっと来てくれ!」
 またか、と思いながら、廊下の奥から聞こえてきた声に、水槽の魚が驚かない程度の音量で応える。これも結構大事な研究材料だ。
「今手が離せないんですよー」
「手が離せないって、書類整理だろう!」
 そんなことは良いから早く来なさい、手伝ってくれ!
 貴方そんなこと言いますけどね、帳簿の計算は途中で止めると面倒なんですよ?
 残りどれだけ費用が使えるか知っておかないとマズイでしょう。
 というかここに積み上がっている領収書はほとんど貴方が作った物ですよね!
 はあ、と溜息をついて立ち上がる。
「解りました、でもちょっと待ってください!」
 書きかけの領収書をノートに挟む。
 こき使われる雇われの身って、ちょっと辛い。
 まだ領収書が二山。勘弁して欲しい。
「アスエル君!」
「はい!」
 とりあえずは返事をして、椅子の背に掛けてあった白衣を引っかける。
 ああ、なんだかまた領収書が増えそうな予感がするんですけど。
 漂ってくる異臭的に、なんだか徹夜になりそうな予感がびしばしするんですけど。
 それでも、どんなに嫌な予感がしたところでアスエルは行かなければならないのだ。
 ああまったく。
 あの人の才能に恋するなんて、自分も馬鹿なことをしたものだ。

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 神羅

 瓦礫に埋もれたくらいでは死なない私達の研究室は、地盤の安定した地下にある。半分以上を占拠したコードと基盤、工具やデータディスク。
 無機に覆われた部屋に、けれど見るからに異質なものが一つあった。
 もう随分昔の部下のものだ。
 箱に入った等身大の人形。ベルトで所々を固定されて収められたそれを、出してみる気はさらさら無かった。
 これを扱うのは私ではない、という気がしていた。動かした経験はなかった。また使ってみたところで、記憶にある彼ほど鮮やかに扱えるとは思えないし、そうなる気もない。
 この人形を操るのはたった一人で良い。

 この体を構成する60兆の細胞全てが無機に置き換わっても、60兆の細胞を統べる、たった一つの私の意志は、決して彼を忘れないだろうと、ピグマリオンは思っている。

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2008/12/18
 神羅

 そのアルバムの最後には、一枚の古びた写真が貼ってある。
 とてもとても古い写真で、既に茶色く色褪せてしまって、細部はよく解らない。微かに残っている独特の色合いは、今では既に使われていない薬品によるものだ。
 写真は人物を撮ったもので、日常を撮ったのではなく、何かの記念なのだろう、家族とおぼしき人物が3人、微笑みを浮かべて写っている。

 それが誰なのか訊いたことはないのだけれど、ただ彼がその写真をとても大事にしていることだけ知っている。

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2008/12/13
 福音
 神羅

 曇り空を透かしたステンドグラスは重い色をして、描かれた聖人の色のない肌ばかりが白い。

 彼に許された最も正式な手順で礼拝を行ったメルキオールが視線を上げた先には、神を模したのだという十字架が奇跡を行う聖人達に囲まれて、屹立していた。
 城の片隅にあるこのこぢんまりとした礼拝堂には厳粛な静謐が満ちていたが、今静けさを保っているのはこの堂内だけだ。

 閉ざされる窓。兵卒達の慌ただしい軍靴の音。密やかに交わされる不安の視線。大聖堂は怯えた祈りを囁く者達で溢れているだろう。
 だが、大聖堂での式典などの際に、代わりの祈りの場として使われるだけのこの礼拝堂には、今は彼以外の人影はなかった。不安を打ち消すための祈りを一人で行いたがる者などそうそう居ないだろう。

 祭壇に灯された灯火を受けて、十字架の表面に施された精緻な彫刻が浮かび上がっている。今まで何百年と人々の祈りを受けてきたであろうそれを見上げて、彼はふと息を吐いた。

 祈りの言葉も礼拝の仕草も、ただ倣い覚えただけのものだ。そこに伴う信仰心は、この十字架に祈りを捧げてきた敬虔な人々に比べれば無いに等しい。
 信仰の地位を得て、もっともらしい言葉を語り、敬虔な信徒たる振る舞いを真似てみたところで、己の内実は変わらなかった。
 本当は、神の実在なんて信じてはいない。その姿を模したのだという十字架は、だから彼にとっては神そのものだ。都合の良い祈るべき対象でしかない。
 そう思っている自分がこんな所で大真面目に祈りを捧げるというのは、考えてみれば実に滑稽だ。普段は無信心なくせに、こんな時だけ願って叶うことを望むとは、虫の良い話だ。
 ほんの少しだけ罪悪感はあった。けれどそれはこの神を信仰する人々に対してのもので、決して神それ自体に対するものではないのだ。


 やはり私は敬虔な信徒にはなれそうもないな。
 ああでも、それならばこの祈りは一体何のためなのだろうね。


 思いながら唇はもう一度祈りの言葉を呟いた。


(どうか)

(あの子達の上に加護があるように)

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